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THE DAWNに込めた思い
100年後の人類は、大判エアロゲルがない世界を思い描けるだろうか。
エアロゲルは、1931年にスティーブン・キスラー(Steven Kistler)によって発明された、地球上の個体の中で最も軽く、断熱性能が高い素材です。しかし、一般的には超臨界乾燥装置という、非常に高価な装置でしか製造することができず、最初に利用されたのは、1980年代につくられたチェレンコフ放射検出器でした。商用利用が本格化したのは2000年代に入ってからのこと。それでも、脆くて壊れやすいことから、板状での量産は困難と言われてきました。そんな中、ティエムファクトリは、京都大学との共同研究により、超臨界乾燥装置を用いないエアロゲル「SUFA」の製造方法を確立。常圧で作製することができ、骨格に柔軟性も持たせられることから、2022年、ついに史上初の大判化に成功しました。大判は、これまで断熱ができなかった窓ガラスをはじめ、さまざまな製品への採用が考えられ、建築やインテリア、プロダクト等、各産業のゲームチェンジャーとして大きな期待が寄せられています。
歴史を振り返ると、産業革命を契機として、今では当たり前のように暮らしを支える、多くの人工素材が発明されました。例えば1835年、フランス人化学者・物理学者のルノーが、世界初となるプラスチック(合成樹脂)、ポリ塩化ビニルを発明。また1909年には、ドイツの化学者フリッツ・ホフマンが世界で初めて合成ゴムを発明しました。以後、さまざまな人工素材が発明され、工業化に成功すると、私たちの生活は劇的に変わっていきました。今では触れない日はないほど、プラスチックは私たちの暮らしに浸透していますが、大判化に成功したエアロゲルもまた、プラスチックのようなポテンシャルを秘めています。イギリスの市場調査会社IDTechExによれば、エアロゲル市場は2031年には7億ドルに到達すると言われており、もしかすると100年後、大判エアロゲルのない暮らしを想像することが困難なくらいに、世の中はエアロゲルで溢れているかもしれません。
本作品は、そんな可能性に満ちたエアロゲルの中でも、世界で初めて大判化に成功したファーストピースです。現存する世界最大の大判エアロゲルである本作は、化学史の観点から見ても非常に貴重であり、世界が大きく変わっていく、その起点となる一枚と言えるでしょう。